有線七宝~LOTUS~

銀線を使った有線七宝の蓮の花の造形についてつづってみます。
ラリックやファリーズなどの七宝を使った数々の名作を見ていて、いつしかジュエリーと七宝を組み合わせた色彩の鮮やかなジュエリーを生み出したいと思うようになりました。
その行程の中で、細い銀線を使って描く有線七宝の魅力に心をときめかせることとなりました。

銀線がを立てることで美しい境界線を持った図案が成立します。

図案に合わせて銀線を立てる

有線七宝蓮銀線立て

お店の名前にも使っている為、蓮の花は私には特別な花だったりします。
その蓮の花が美しく開花した図案をまずは描きました。
その図案に沿って、0.08mmという細く打ち出された純銀製の銀線を曲げたりカットしたりして花を描く数枚の花びらをかとどっていきました。
蓮の花って、花びらが色々な角度で開く為、表情が違って見えてどの花も違うんだなと思わせてくれる花ですね。
花びらの曲線を滑らかに象りました。

そして、花びらや中央の花托のパーツを丸めた板に糊を使って置いていきます。
図案通りにパーツが置けたら銀線を焼き付ける為に炉に入れます。

釉薬をのせる

有線七宝釉薬をさす

銀線を立てた後は釉薬の登場です。
今回はピンク色の蓮の花を描きたかったので、「メルヘンピンク」という変色のしにくいピンク色の釉薬と花びらの中央に半透明の白い釉薬を選びました。
赤が入る釉薬は、七宝では色を出すのが難しいのです。
ピンク系、紫系、そして勿論赤系の色見は、理想の色にするのがとても難しかったりします。
そんな赤系を含むピンクの中でも変色しないようにと開発されたメルヘンピンクはありがたい存在。
ピンクから白へとグラデーションになるように釉薬を置き、細いサジで境界をぼかしていきます。

受け取ったビジョンの絵は、ピンクの蓮の周りにビリジアングリーンのような青緑色をした釉薬が広がっている絵だったので、2色の緑色の釉薬をチョイスしてのせていきました。

写真のように、釉薬を一度のせて焼いてみると、溶けた釉薬は予想よりも膨らみがなく、各パーツごとに中央にむけてなだらかに凹んでいます。
この凹みをなくすため、4度程釉薬をのせて焼いてと、繰り返します。

焼きあがった直後の色

有線七宝釉薬をさす

3度目の釉薬をのせて焼いた直後の写真です。

炉を800度にして1分程の時間をかけて焼き上げます。
焼いた直後はこのように粉だった釉薬が溶けて高温になっています。
色は実際の釉薬の色とは違った状態になっていますが、ここから温度が冷めていくごとに美しい釉薬の色見が少しずつ見えてきます。
一番緊張する瞬間。
メルヘンピンクの上にもう少しピンク色の濃い、さくらという釉薬を重ねました。
動画は温度が冷めてきて色が鮮やかさを見せてくれているさまを映しています。

表面をなだらかにする

有線七宝釉薬をさす

4回釉薬をのせたら表面をなだらかに磨き上げます。
美しい曲線にするために、ダイヤモンドやすりでやさしくなでるように研磨していきます。
表面が美しい曲線に研磨できたら、最後にもう一度焼きます。

蓮の花は、仏さまの下に描かれていたり、神様が生まれとされていたり、とても神聖な花として扱われていますね。
泥の中から真っすぐに茎をのばし、輝く美しさの花を咲かせるその様は、生きている人間に多くのことを教えてくれたに違いありません。

完成した蓮の花のブローチ

有線七宝~LOTUS~

美しい蓮の花が誕生しました。
ジュエリー枠にセットしてブローチとして仕上げました。
蓮の花は色々な図案でチャレンジしたいと思っています。
ありがとうございました。